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長野県のブルーカードによる集客効果(安岡寛道)

書籍2

1.ブルーカードの主な提携関係と参加要件

全国型ポイントカードとは異なり、地域内で桁違いに集客効果が高いポイントプログラムが存在する。そのひとつが、ブルーアライアンス株式会社(東京都港区、川野和哉社長)が運営する地域共通ポイントカードの「ブルーカード(blca:ブルカ)」である。特に、長野県において、関連会社の株式会社信州コミュニケーションズ(長野市中御所、平野稔社長)が運用するポイントプログラムの集客効果が高い[1]。

この長野県の地域ポイントカード連合は、1986年6月に設立され、2011年3月現在では、既に500店が加盟店となっている。 加盟店は、ホームセンター、スーパー、書店、眼鏡店、靴店、アパレル、デパート、タクシー等の消費財のみならずサービス産業も含まれ、基本的には1業種1社の企業が参加している。

また、ブルーカードの発行枚数は56万を超え、有効会員数は44万を超えている。これは、有効会員ベースでは、長野県の世帯普及率45%程度である。取扱高(流通総額)は、600億円の規模にまで達している。

長野県以外にも、伊予(愛媛県)、山口、愛知、山形、新潟、大分、北九州(福岡県)にも展開されている。今後も地域に特化して展開する予定であり、主に全国規模のナショナルチェーンと提携するTポイントやPonta等とは一線を画している。

加盟店のポイントカード参加の月額運営基本料は、1店舗当たりにかかり、店舗従量制であるが上限は設定されている。また、随時の費用として、ポイント付与1%分(倍付の場合は、その額)と手数料がかかり、ポイント利用分は翌々月10日に換金され、付与分と相殺される。

その他のオプションとして、売上伝票入力データや購買履歴(会員ID+POSデータのJANコード)を加盟店のプロモーションに活用することが可能である。例えば、書店で結婚情報誌を購入した方へ、結婚式場がブライダルフェアを案内すること等が可能である。

2.ブルーカードの集客効果

図表4-19 長野のブルーアライアンスの地域ポイント連合
(出所)ブルーアライアンス・ホームページ、及びヒアリングをもとに筆者作成

図表4-19 長野のブルーアライアンスの地域ポイント連合

図表4-19に示すように、ブルーカード会員は、上記の加盟店で購入額の基本的に1%分をポイント付与され、それらの店舗で1ポイント1円として利用できる。ただし、そのまま利用できるのではなく、半年毎に500ポイントで500円の商品券が郵送され、それが利用できる形式であり、ポイントは2年間利用が無ければ失効される。

この条件であるにも関わらず、ポイントの利用率は北信州で94~97%と桁違いに高い。通常のポイントプログラムは、1円から利用できる場合も多いが、その場合でも90%の利用率があるのはかなり高い方である。

ポイントプログラムの利用率が高いということは、それだけ会員の参加店舗への来店を促進しているということになり、効果の高さを表しているとも言える。1%上げるだけでも相当な施策を有するため、通常は高くても80%の利用率としても、その14~17%も高いということは、14~17倍の桁違いな効果とも言える。


3.ブルーカードのマーケティング施策と今後

ブルーカードの仕組みは、より地域店舗に密着した施策が行えるようになっている。例えば、スーパーのような加盟店では、タイムセール(時間帯、商品別等のセール)としてポイントを倍付する等の施策も行える。このような施策は、主顧客である「30~50代の主婦」には非常に効果的である。また、ホームセンターの動線上に「ブルーカードののぼり」をつけただけでも人の列ができる状態である。

このように、地域経済圏に特化したポイント連合を形成するのは、地域経済活性化にも効果的であろう。連携することによって、間接経費を出来るだけ安く抑え、地域住民のあらゆる層に利用できるリアルな取引を中心に、購買意欲を高める施策を展開できる。

図表4-20
図解1

そこで、図表4-20に示すように、1社単独でなく、かつ大手のナショナルチェーンとも異なる地域密着型のポイントプログラムを提供している[2]。さらに、ブルーアライアンス自体は、英国の共通ポイントを提供するTescoやNectarカード等のノウハウを収集し、これらで得た会員向けのライフスタイルの提案を広げようとしている。

これらの地域ポイント連合は、ナショナルチェーンが地域に出店する際に、その対抗の地域振興として導入する傾向があり、地域内での連携を広めている点が重要である。

例えば、地域が発行する地域通貨は600以上も存在するが、そのほとんどがかなり限定的な地域に閉じており、都道府県内でさえ融通性が無く、失敗に終わっている。

つまり、SuicaやEdyのような汎用的な電子マネーと異なり、元々馴染みのない通貨を新規に発行し、同じ県内でも他地域で使えないのは成功せず、ある程度の融通性が必要となる。その課題をクリアしたのが、このブルーカードの地域ポイント連合である。

今後は、地域を代表するようなメディア(地域の広告代理店、新聞社、ISP等)も加盟店に取込み、地産地消などのプロモーションも効果的に行っていけば、より地域全体に浸透していくだろう。さらに、地域観光の温泉地や世界遺産等の要素も含めていけば、地域間連携にも発展していく可能性を秘めている。

参考文献:
[1]信州コミュニケーションズHP  (20110831)
[2]ブルーアライアンス「ブルーアライアンスとは」『事業情報』  (20110831)

出典: 「桁違い効果の経営戦略」
3.(集客の拡大)長野県のブルーカードによる集客効果(安岡寛道)P.200~

編著 石川 昭、税所哲郎
著:辻本 篤、中川淳平、藤井 享、松出和男、安岡寛道、米沢 隆

発行所:芙蓉書房出版